私たちが納めたお賽銭はどうなる?神社本庁とお金の流れ

最終更新日 2025年12月8日 by rostea

神社を訪れ、願い事や感謝の気持ちを込めてお賽銭箱にお金を入れる。
これは、私たち日本人にとって非常に馴染み深い光景です。

しかし、そのお賽銭がその後どうなるのか、具体的に考えたことはありますか?
「神主さんの生活費になるの?」「建物の修繕に使われるの?」「もしかして、多くの神社をまとめる『神社本庁』という組織に集められるの?」

この記事では、そんな素朴な疑問に答えるべく、私たちが納めたお賽銭の具体的な使い道から、神社本庁の役割、そして神社全体のお金の流れまでを、分かりやすく徹底解説します。
この記事を読めば、神社を支える仕組みへの理解が深まり、次のお参りがより一層意義深いものになるはずです。

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目次

お賽銭の主な使い道は?神社の運営を支える貴重な財源

結論から言うと、お賽銭は神社の運営を支えるための貴重な財源として、多岐にわたる用途で大切に使われています。
多くの人がイメージする通り、お賽銭は神社の収入の一部ですが、大規模な神社を除き、お賽銭だけで運営を賄うのは難しいのが実情です。
それでも、お賽銭が日々の神社運営に不可欠であることに変わりはありません。

1. 境内地の維持管理費

神社は、神様が鎮座する神聖な場所であると同時に、歴史的な建造物や豊かな自然環境を持つ場所でもあります。
その清浄で荘厳な空間を維持するためには、多額の費用が必要です。

建物の修繕・改築

木造建築である社殿や鳥居、社務所などは、風雨や経年劣化により常に補修が必要です。
特に、数十年から数百年に一度行われる大規模な修繕や建て替え(式年遷宮など)には、数千万から億単位の莫大な費用がかかることもあります。
お賽銭は、こうした未来の大きな支出に備えるための積立金としても活用されます。

境内の清掃・植栽の手入れ

美しい境内を保つための日々の清掃、落ち葉掃き、ご神木や鎮守の森の植栽管理(剪定や伐採)などにも費用がかかります。
参拝者が気持ちよく過ごせる環境を整えることは、神社の重要な役割の一つであり、そのための費用にお賽銭が充てられています。

2. 祭事や儀式の費用

神社では、年間を通じて様々な祭事や儀式が執り行われます。
これらの神事を滞りなく行うためにも、お賽銭は重要な役割を果たしています。

お供え物や装飾品の購入

神様にお供えする神饌(しんせん)と呼ばれるお米やお酒、海の幸、山の幸の購入費用や、祭壇を飾るための装飾品、神職が使用する祭具などの費用にお賽銭が使われます。

祭事の準備・運営コスト

お祭りの際には、特別な設営が必要になったり、告知のためのポスターを作成したりと、様々な準備費用が発生します。
また、祭事を手伝う人への謝礼など、運営に関わるコストにも充てられます。

3. 神職や職員の人件費

神社を維持し、日々の業務を行うためには、神職(神主)や巫女、その他の職員の存在が不可欠です。

神主さんや巫女さんの給料

神職や巫女も、私たちと同じように生活を営んでいます。
お賽銭を含む神社の収入から、彼らの給与が支払われています。
ただし、特に地方の小さな神社では、神職の給与だけで生計を立てるのは難しく、他の仕事と兼業しているケースも少なくありません。

事務職員などの人件費

参拝者の応対や電話対応、経理などの事務作業を行う職員の人件費も、神社の運営に必要な経費です。
規模の大きな神社では、警備員などを雇用している場合もあり、その給与もお賽銭を含む収入から支払われます。

4. 光熱費や備品購入などの諸経費

社務所の電気代や水道代、電話・インターネットなどの通信費、お守りやお札などの授与品を制作・仕入れするための費用など、神社を運営していく上での様々な諸経費にもお賽銭が活用されています。

お賽銭は「神様への感謝」を示すもの

ここまで実用的な使い道を紹介してきましたが、お賽銭の本来の意味は、日頃の神様のご加護に対する「感謝の気持ち」を表すお供えです。
かつてはお米や海産物などを「幣帛(へいはく)」としてお供えしていましたが、貨幣経済の浸透とともに、お金を納める形に変化していきました。
私たちが納めるお賽銭は、神社の運営を支えるという現実的な側面と、神様への感謝を示すという信仰的な側面の両方を持ち合わせているのです。

神社本庁とは?その役割と神社との関係

次に、神社の話でよく耳にする「神社本庁」について解説します。
お賽銭の行方を考える上で、神社と神社本庁の関係を理解することは非常に重要です。

神社本庁の基本情報

日本全国の約8万社を包括する組織

神社本庁とは、伊勢神宮を本宗(ほんそう:信仰の中心)とし、日本全国にある約8万社の神社のうち、約7万9千社を包括する日本最大の神道系宗教法人です。
「庁」という名称がついていますが、国や地方公共団体の役所ではなく、宗教法人法に基づき設立された民間の団体です。
全国47都道府県に地方機関として「神社庁」が置かれています。

設立の経緯と目的

神社本庁は、第二次世界大戦後の1946年(昭和21年)に設立されました。
戦前、神社は国家の管理下にありましたが、戦後GHQによる「神道指令」によって国家から分離されました。
これを受け、全国の神社が協力し、自主的に神社の伝統を守り、発展させていくために設立されたのが神社本庁です。
その目的は、包括する神社の管理・指導、神道の教えを広める活動、神職の養成など多岐にわたります。

神社本庁の主な役割

神社本庁は、いわば各神社の「本部」や「組合」のような役割を担っています。

神職の養成・資格認定

神主になるためには、神社本庁が定める階位(資格)を取得する必要があります。
神社本庁は、神職を養成するための大学(國學院大學、皇學館大学)での教育や、各種研修会を実施し、神職の資質向上に努めています。

伝統文化の継承・広報活動

日本の伝統文化と深く結びついている神社の祭事や儀式が、正しく継承されるよう指導しています。
また、冊子の発行などを通じて、神道や神社についての正しい知識を国民に広める広報活動も行っています。

各神社への指導・サポート

各神社が健全な運営を行えるよう、法務や税務、境内地の管理などについて指導やサポートを行います。
また、災害で被災した神社の復興支援など、個々の神社だけでは対応が難しい問題に対して、組織的な支援を行うことも重要な役割です。

すべての神社が神社本庁に属しているわけではない

全国の神社の大多数が神社本庁の包括下にありますが、一部には属していない「単立(たんりつ)神社」も存在します。
例えば、京都の伏見稲荷大社や、東京の靖国神社などが有名です。
これらの神社は、神社本庁とは独立して独自の運営を行っています。

【本題】お賽銭は神社本庁へ行くのか?お金の流れを徹底解説

ここからが本題です。
私たちが納めたお賽銭は、神社本庁へ送られるのでしょうか?
お金の流れを具体的に見ていきましょう。

結論:お賽銭が直接神社本庁へ送られることはない

まず結論を明確にすると、参拝者が納めたお賽銭が、そのまま直接神社本庁へ送られることはありません。

お賽銭は、あくまでその神社に納められたものであり、その神社の収入となります。
そして、前述したように、まずはその神社の維持運営のために使われます。

では、神社本庁の運営資金はどこから来ているのでしょうか。
それが「負担金」という仕組みです。

神社から神社本庁への「負担金」という仕組み

神社本庁に包括されている各神社は、神社本庁に対して「負担金」を納めています。
これは、企業が業界団体に支払う「会費」のようなものと考えると分かりやすいでしょう。

負担金の目的と位置づけ

この負担金は、神社本庁が前述のような神職の養成や伝統文化の継承、各神社へのサポート活動などを行うための運営資金となります。
神社界全体の発展と維持のために、各神社がその規模や能力に応じて費用を分担し合う、という考え方に基づいています。

負担金の金額はどう決まる?

負担金の額は、各神社の規模や収入、氏子の数などに応じて決められます。
国勢調査の人口データなどを基に、各都道府県の神社庁が管轄内の神社の事情を考慮して、それぞれの神社の負担額を決定します。
そのため、年間の負担金額が数千円の小さな神社もあれば、数百万円にのぼる大規模な神社も存在します。

お賽銭を含む神社の収入から捻出される

重要なのは、この負担金は、お賽銭、祈祷料、授与品の売上など、神社の様々な収入(経常収入)の中から経費として支払われるという点です。
つまり、「お賽銭の一部が、神社の経費として神社本庁に渡っている」と捉えることができます。
お賽銭が直接送られるわけではありませんが、間接的に神社本庁の活動を支えていると言えるでしょう。

図解で見る:神社とお金の流れ

ここまでの流れを整理すると、以下のようになります。

お金の流れ説明
① 参拝者 → 神社お賽銭、祈祷料、お守り購入など
② 神社の収入①で得たお金は、まずその神社の収入となる
③ 神社 → 経費支出境内地の維持管理費、人件費、祭事費用などを支出
④ 神社 → 神社本庁神社の収入の中から、経費の一部として「負担金」を納付
⑤ 神社本庁の収入各神社から集められた負担金が、神社本庁の主な運営資金となる

神社本庁の主な財源は各神社からの負担金

神社本庁の会計予算における収入の大部分は、全国の神社から納められるこの負担金によって成り立っています。
2016年の報道によれば、この負担金による収入は年間で約10億円にのぼるとされています。
このほか、各神社からの寄付金なども神社本庁の財源となっています。

お賽銭だけじゃない!神社の多様な収入源

多くの神社、特に地方の小さな神社では、お賽銭だけでは運営が成り立たないのが現実です。
そのため、神社は様々な方法で運営資金を確保しています。

祈祷料(初穂料・玉串料)

七五三、厄払い、安産祈願、地鎮祭、神前結婚式など、個人や法人が行うご祈祷の際に納める謝礼(初穂料・玉串料)は、神社にとって最も重要な収入源の一つです。

授与品(お守りやお札、おみくじなど)の頒布

お守りやお札、絵馬、おみくじなどを参拝者に授与(販売)することによる収入も、運営を支える大きな柱です。
特に、伊勢神宮の神札である「神宮大麻」の頒布は、多くの神社にとって重要な収入源となっています。

寄付金(玉垣や提灯の奉納など)

氏子や崇敬者(その神社を篤く信仰する人々)からの寄付金も、神社の財政を大きく支えています。
境内で見かける、名前が刻まれた玉垣(たまがき)や石灯籠、提灯などは、こうした寄付によって奉納されたものです。
社殿の修復など、大きな費用が必要な際には、広く寄付が呼びかけられます。

不動産収入などの収益事業

神社が所有する土地を駐車場として貸し出したり、マンションやビルを建てて賃料収入を得たりすることもあります。
これは後述する「収益事業」にあたり、神社の安定的な運営基盤となる場合があります。

神社と税金の気になる関係

「宗教法人は税金がかからない」というイメージを持つ人も多いかもしれません。
しかし、これは必ずしも正確ではありません。
神社と税金の関係について、正しく理解しておきましょう。

宗教法人は原則「非課税」

宗教法人法に基づき、神社は公益性の高い団体と見なされており、その活動には税制上の優遇措置が設けられています。

非課税の対象となる「宗教活動」とは?

法人税法上、宗教法人が行う本来の「宗教活動」から生じる所得は非課税と定められています。
具体的には、以下のような収入が該当します。

  • お賽銭
  • 祈祷料(初穂料、玉串料)
  • お守り、お札、おみくじの頒布による収入
  • 寄付金(お布施)

これらは、営利を目的としない宗教行為の一環と見なされるため、法人税は課税されません。

なぜ非課税なのか?

これは日本国憲法で保障されている「信教の自由」の考え方に基づいています。
国が宗教活動に課税を行うと、宗教活動への間接的な圧迫につながる可能性があるため、公益性の高い宗教活動については税を課さない、という考え方が採られています。

課税対象となる「収益事業」

一方で、宗教法人が行う事業であっても、営利を目的とした「収益事業」と見なされるものには、一般企業と同様に法人税などが課税されます。

具体例:駐車場経営や不動産賃貸など

法人税法では34種類の収益事業が定められており、神社に関連する主な例としては以下のようなものがあります。

  • 不動産貸付業: 所有する土地や建物を継続的に貸し付けて賃料を得る(月極駐車場など)
  • 席貸業: 境内地や施設を、結婚式の披露宴会場や会議室として貸し出す
  • 物品販売業: 絵葉書や写真集、その神社独自のお菓子などを販売する
  • 技芸教授業: 茶道教室や書道教室などを開いて月謝を得る

これらの事業から得た利益には、定められた税率で法人税が課税されます。

収益事業には法人税などが課される

このように、神社の収入は「非課税の宗教活動」と「課税対象の収益事業」に明確に分けられています。
すべての収入が非課税というわけではなく、事業内容によって税務上の扱いは大きく異なるのです。

神職個人の給与は課税対象

非常に重要な点として、神職や巫女、職員が神社から受け取る給与は、課税対象です。
これは、一般企業の会社員が受け取る給与と同じ扱いです。
所得税や住民税が源泉徴収され、年末調整も行われます。
「聖職者だから税金を払わなくていい」ということは決してありません。

まとめ

この記事では、私たちが納めたお賽銭の行方と、神社本庁とのお金の流れについて詳しく解説しました。

最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

  • お賽銭の主な使い道は、社殿の修繕や境内の維持管理、祭事の費用、神職の人件費など、神社の運営を支えるための貴重な財源である。
  • 神社本庁は、全国約7万9千の神社を包括する組織であり、神職の養成や各神社のサポートなど、神社界全体を支える役割を担っている。
  • お賽銭が直接神社本庁へ送られることはないが、神社はお賽銭を含む収入の中から「負担金」を神社本庁に納めており、間接的にその活動を支えている
  • 神社の収入は、お賽銭だけでなく、祈祷料や授与品の頒布、寄付金など多岐にわたる。
  • 宗教法人の宗教活動による収入は非課税だが、駐車場経営などの「収益事業」には法人税が課税される。また、神職個人の給与も課税対象である。

私たちが何気なく納めているお賽銭が、神社の神聖な空間を守り、日本の伝統文化を未来へ繋ぐための大切な一助となっていることがお分かりいただけたかと思います。
次に神社を訪れる際は、ぜひこの記事の内容を思い出し、改めて感謝の気持ちを込めて参拝してみてはいかがでしょうか。